恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



浜中課長は慌てて階段を駆け上っていく。

それを見上げていた花澄だったが。


突然横から肩を掴まれ、抱き寄せられた。

はっと顔を上げた花澄の唇に、雪也の唇が重なる。


「────っ!」


月曜の朝以来の、雪也の唇の感触。

しっとりとした熱い感触に、全身を包む込むワイルドリリーの大人っぽい香水の香りに、頭の芯が溶けていく。

脱力しかけた花澄の背を強く抱きしめ、雪也は囁く。


「……会いたかった」


心の底から絞り出すような声に、胸がいっぱいになる。

……しかしここは会社だ。

花澄は慌てて雪也の胸を押した。

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