恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



「兄貴を愛してないのに、どうして君は……っ」

「……っ……」


雪也の悲痛な声が胸を打つ。

花澄は目前にある雪也の瞳をじっと見つめた。

……交叉する視線が、互いの心を伝えあう。

やがて雪也は軽く首を振り、花澄の額にそっとキスを落とした。


「……君が俺を嫌いなら、全く気持ちがないなら、仕方がないと思う。でも君は俺を好きなのに兄貴を選んだ。それだけはどうしても許せない」

「雪、くん……」

「君が俺を好きな以上、俺は君を諦めるつもりはないよ。……諦めさせたいなら、俺の心から君を好きな気持ちを全て消してほしい。昔の想い出もね」


雪也の言葉が花澄の心を雁字搦めに縛り付けていく。

激しい恋情を帯びた雪也の瞳が、もうどこにも逃がさないと告げている。


……堕ちていく……


甘い毒に満ちた恋獄に、鎖に巻かれて引きずり込まれる。

花澄は雪也の腕の中で、自分の心が全て雪也に囚われてしまったことを感じていた……。



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