恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
「……雪也君?」
「お久しぶりです、繁次さん」
雪也はにこやかに笑い、一礼した。
繁次は驚いたように雪也と花澄の顔を見比べる。
「わしは、賢吾君が来るのかと思っていたが……」
「賢吾さんは急遽出張になっちゃって……。で、代わりに雪くんが……」
と言いかけた、その時。
建物の外で車が止まるような音がした。
それを聞いた繁次が、慌てた様子で懐から何かを取り出す。
「そういえば、今日来ると言ってる中国企業の役員なんだけどな。どうやら環と関係があるらしい」
「────え?」
突然の父の言葉に、花澄は目を見開いた。
その隣で雪也も瞠目する。
固まった二人の前で、父は懐からガサガサと何やら紙のようなものを取り出した。