恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



繁次は考え込みながら言う。

花澄は調査書をじっと見つめた。

環が関わっているというのなら、その目的は恐らくただ一つだ。

────『恩返し』。

彼は昔から白黒はっきりつける性格だが、義理堅い一面もある。


しかし。


恐らく、自分に関しては……。

裏切った自分を彼は決して許しはしないだろう。

繁次に対しては『恩返し』の気持ちがあるだろうが、自分に対してはむしろ『御礼参り』に近いかもしれない。

花澄は思わず背を強張らせた。

そんな花澄の肩を、雪也がポンと軽く叩く。


「……っ、雪くん……」

「大丈夫だ、君は俺が護る。例え相手が誰であっても、君を傷つけさせはしない」


雪也の力強い言葉が花澄の心に勇気を与えてくれる。

花澄は肩に置かれた雪也の手にそっと触れ、頷いた……。

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