恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



「私、雪くんが好き。……賢吾さんとは別れる。雪くんを『選ぶ』から」

「……っ、花澄……」

「だから雪くんも縁談は断って。お願い」


花澄の言葉に、雪也はその綺麗な双眸を大きく見開いた。

これまで花澄が雪也に何かを頼んだことはない。

食い入るように花澄を見つめていた雪也の瞳が、ゆっくりと滲んでいく。


月の光を溶かしたかのような、透明感のある綺麗な瞳が細められる。

花澄の大好きな、雪也の笑顔……。


「……君の『お願い』、もの凄い破壊力だな。これまで聞かなかったのは正解かもしれない」

「雪くん……」

「君の言葉、本当に嬉しい。……今まで生きてきた中で、一番嬉しいよ」


雪也の手が花澄の背に回り、強く抱きしめる。

……その手が、かすかに震えている。

花澄も縋るように雪也の背に手を回した。



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