恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~

3.大人の選択




4月中旬。

週末の日曜日。


花澄と雪也は伊豆にある月杜家の別荘にいた。

別荘は西伊豆の山間部の高台にあり、門をくぐると両脇に手入れされたロックガーデンが広がっている。

さらに奥に進むと建物へと続くアプローチがあり、白煉瓦でできたスパニッシュ風の建物が奥から姿を現す。


別荘は2階建てで、『春夏秋冬』でそれぞれ名づけられた4つの区画で構成されており、花澄はいつも『夏』の区画にある南向きの部屋を使っている。

青緑色の落ち着いた内装で統一されたその部屋の向こうには、窓越しにエゴノキや夾竹桃などの夏の木々が植えられた庭が見える。


今日はイースターパーティということで、花澄も昨日、卵のペインティングを手伝った。

イースターはキリストの『復活祭』で装飾した卵を飾る習慣がある。


花澄は玄関ホールの脇に設えられた台の上に卵を並べながら、ちらりと雪也に目をやった。

雪也は奥のダンスホールでオーケストラブースの位置を執事達と調整している。

今日は午後から招待客を招き、食事会と舞踏会を開く予定だ。


「……ダンス、か……」


7年前にここに来たときは、ドレスを持ってくるのを忘れてしまい大変な目に遭った。

しかし今回は……。


< 318 / 334 >

この作品をシェア

pagetop