恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



────おとといの夕方。

『実はドレスを持ってない』と言った花澄を、雪也はすぐに車で青山にある月杜家御用達の洋服店へと連れて行った。

そこで雪也や店員に勧められるまま、ドレスを5着ほど試着した。

しかし久しぶりに着たのでどれがいいのかよくわからず……。

うーんどうしようと首を傾げた花澄の前で、雪也はあっさりと店員に言った。


『それ、全部包んでください』


全部って……。

と驚く花澄に、雪也は事もなげに言った。


『どうせこれから何度も着る機会はある。この際、ある程度揃えておいたほうがいいよ』

『えっ、でも……っ』

『遠慮しないで。こんなのはまだ序の口だ。この程度で驚かれては困る』

『……え?』


花澄は思わず声を上げてしまった。

序の口、って……。

押し黙った花澄に、雪也は少し笑って告げた。

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