恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



確かに今、東洋合繊と港南機業はアラブ向け浄水プラントで事業提携している。

であれば環がここに来てもおかしくはない。

見上げる花澄を環はしばしじっと見つめた後、くすりと笑った。


「お前のその恰好。あの時の金襴緞子より、遥かにマシだな?」

「……あんた、わざわざ嫌味を言いに来たワケ?」


花澄は思わず昔の口調で言ってしまった。

そんな花澄を見つつ、環は楽しげにくすくすと笑う。

その瞳によぎる、懐かしさと……かすかな切なさ。


「……お前、変わったな。雰囲気が変わった」

「そう?」

「お前を変えたのは、あの男か……」


環は呟き、腕を組んだ。

そのまま窓の外に視線を投げ、自嘲するように笑う。


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