恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
「……あの男にこの間言われたことを、おれなりに考えてみた。きっとおれは7年前、お前の一番傍に居ながら、大事な何かを見落としていたんだろう」
「……環……」
「でもあの男はそれに気づいていた。そしてその上で、お前がおれの方を向いていると知っても、それでもお前の心を包み守ろうとしていた」
環はふっと目を細め、細く長いため息をついた。
腕を組んでどこか遠くを眺めるようなその仕草は、昔から変わらない。
花澄は環の言葉を驚きとともに聞いていた。
……環は頭がいい。
きっとこの間雪也に言われたことから、彼なりに推察したのだろう。
環はゆっくりと花澄の方を向いた。
翳りを帯びた美しい榛色の瞳が、優しく細められる。
「きっとあの男はお前を幸せにするだろう。……幸せになれ、花澄。今も昔も、おれが願っているのはただそれだけだ」
「……環……」
「式や披露宴が決まったら呼べ。盛大な祝いをしてやるよ。香港流のな?」