恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



環は穏やかな眼差しで花澄を見つめながら言う。

花澄は7年前とは違う、その大人びた眼差しに胸を打たれた。


環が傷ついていないはずがない。

けれど環は『大人の選択』をしてくれた。

花澄の幼馴染に戻るという、大人の選択を……。


環は、大人になったのだ……。


環は少し笑い、くしゃっと花澄の髪を撫でて踵を返した。

……その背に漂う、深い孤独の影。

きっと彼の心にはまだ、埋められない空洞があるのだろう。

けれど彼はそれを隠し、花澄の幸せを願ってくれた。


幼い時からずっと傍に居た、大切な幼馴染。

7年経っても彼の優しさは変わらない。

花澄は感謝の気持ちとともに、環の後ろ姿が廊下の向こうに消えていくのを見つめていた……。


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