恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
4.始まりの場所
21:00。
パーティ終了後、招待客をロータリーで見送った花澄と雪也はそのまま部屋へと戻ってきた。
『夏』の区画にある南向きのこの部屋は、15年前、二人が初めて会った場所でもある。
────花澄と雪也が窓越しに初めて言葉を交わした、あの七夕の夜。
春を迎え、窓の庇の下には燕の巣がこんもりとできている。
夾竹桃やサルスベリの木々の手前には竹が植えられた一角があり、風が吹くたびに若い枝がしなってザザッと揺れる。
春の夜風に乗り、どこからか飛んできた桜の花びらがふわりと窓のさんに落ちる。
二人は窓辺に立ち、並んで庭を眺めていた。
雲ひとつない晴れ渡った夜空に浮かぶ十六夜の月を眺めながら、そっと手を重ねる。
「……君とここから月を眺めるのも、7年ぶりだな」
「うん、そうだね……」
────あれから、15年。
二人は幼い日々を共に過ごし、青春を迎え……そして7年間の別離を経て、再び再会した。
その全てが始まった想い出の場所に、二人で戻ってこれた喜びをかみしめ合う。