恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



やはり雪也には自分の心などお見通しらしい。

────敵わない。

花澄はくすくすと笑い、肩に回された雪也の腕にそっと手を重ねた。

肩から伝わるかすかな重みが、優しい温かさが心地よい。


「……俺達はこれから、いろいろなものを『選んで』いくことになるだろう。選ぶことに痛みはつきものだ。逃げることはできない」

「雪くん……」

「でもその痛みが少しでも軽くなるように、君が痛みを負わなくても済むように、俺は努力していきたいと思う。……だから花澄、俺を頼ってほしい。君はもう一人じゃない」


雪也の穏やかな眼差しが花澄の心に入り込む。

その包み込むような大人びた眼差しに、花澄はドキッとした。

……ずっと昔から花澄の『弱さ』を知っていた雪也。

大人になった今、雪也は大人の包容力で花澄を守ろうとしてくれている。

その優しい心に、深い想いに、胸がじわりと熱くなっていく。

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