恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



ドキン、と花澄の胸が大きく高鳴る。

……この感覚には、覚えがある。

心の奥に沈めた初恋が、大きな波に突き動かされ、目覚め始める。


────ダメ、なのに……


環に感じていた焼けるような熱情とは違う、純粋なときめき。

自分の心の一番優しい部分から生れ出る、温かい気持ち。


花澄は心の動揺を押し隠すように、慌てて視線を逸らした。

テーブルの上に置いてあった取り皿と箸を取り、並んでいる料理を少しずつ皿に取っていく。

一通り取り終わったところで、花澄はその皿を雪也の前に置いた。


「……どうぞ、月杜君」

「ありがとう」


雪也は再びにこりと笑う。

花澄は喉の奥がきゅっと痛むのを感じ、目を伏せた。

雪也が自分に笑顔を見せるたび、自分は雪也に惹かれてしまう。

けれど雪也にはもう彼女がいるし、自分とは立場も身分も違う。


やはり、これ以上近付くわけにはいかない……。

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