恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



雪也は笑みを浮かべたまま、花澄の方へと一歩近寄る。

花澄は無意識のうちに後ずさりながら、掠れた声で言った。


「……ゆ、雪くん……どうして……」

「簡単なことだよ。君が行ったのは回り道。俺は近道を抜けて君を待ってただけ」

「…………っっ」

「駅に行くならどちらにしてもこの道を通るからね。……ま、君が近道を使ったとしても、追いかけて捕まえる自信はあったけど?」


雪也は目を細め、花澄を見る。

花澄は呆然と雪也を見上げたまま、一歩、また一歩と後ずさった。

確かに雪也は昔から運動神経は抜群で、運動と名のつくものはどれも人並以上にこなすことができる。

そして御曹司のため、空手や柔道なども護身のため一通り身に付けている。

そんな雪也からすれば、どちらかというと運動音痴な花澄を捕まえることぐらい造作もないだろう。


しかし。


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