恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
店員はにこりと笑い、優雅に一礼した。
そのまま花澄を店の中へと案内する。
花澄は姿勢を正し、ゆったりした足取りで店員の後に続いて歩いた。
……せめて挙措だけでもこの場に相応しいものにしなければ……。
と久しぶりに緊張しながら歩いていた花澄だったが。
その途中。
窓際に設えられた半個室スペースの脇を通りかかった花澄は、その中にいた人物の姿を見た瞬間、思わず足を止めた。
ふわっとした黒褐色の髪に、甘く端整な顔立ち。陶器のような肌。
バランスのとれた長身に、黒ストライプの上品なスーツが良く似合っている。
そして、月の光を溶かしたかのような、透明感のある澄んだ双眸……。
────まさか。
凍りついた花澄に、その人物はゆっくりと視線を向ける。
そして、花澄を見た瞬間……
その瞳が、驚愕で見開かれた。
「……花澄?」