恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
二章
1.展示会にて
一月下旬。
とある平日の朝。
会社に出勤した花澄は役員室の一角で、昨日パソコンで作っておいた役員達の本日の予定表を印刷していた。
ブラインドを開けて部屋の空気を入れ替えがてら、印刷した予定表を役員達の机の上に置いていく。
花澄が勤めている『森口商事』は天然繊維の卸会社で、東南アジアなどから仕入れたケナフや竹、ヘンプ等の素材を国内の各商社に納めている。
7年前、ハローワークで職探しをしていた花澄を拾ってくれたのがこの会社だった。
花澄は幼い頃から父の工房に出入りしていたため、繊維にはそれなりに詳しく、そういった理由から採用を決めたらしい。
しかし花澄が配属されたのはなぜか秘書室で、今は3階の役員室の隅で役員達に関わる細々とした仕事をしている。
「おはよ~、花澄ちゃん」
「おはようございます、副社長」