恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



「今回は50社ほど出展しているようですが、どこから回りますか?」

「うーん、そうだな~……」


と、宮澤が首を捻った時。

花澄はパンフの出展企業一覧の中に見覚えのある社名を見つけ、息を飲んだ。


『東洋合繊』。


考えてみれば、雪也の会社は日本で随一の繊維メーカーだ。

雪也の会社からすれば、花澄の会社は孫会社にすらなるかならないかというレベルだが、両社とも『繊維系』であることに変わりはない。

それにまさか、専務取締役である雪也がこういう展示会にいるとも思えないし……。

と内心で思う花澄に、宮澤はにこやかに告げる。


「そうだな。じゃあまずは、有名どころから行くとするか?」

「……え?」

「旭日化成と東洋合繊からいくか。近いのは……東洋合繊か?」


宮澤はふむと頷き、すたすたと歩きはじめる。

……まさかよりによって最初が東洋合繊とは。

花澄は何とも言えない思いを抱えつつ、慌てて宮澤に続いた。



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