恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
花澄は胸の鼓動を押さえるように、無意識のうちに胸元に手を当てた。
……信じられない。
まさか、彼がここにいるなんて……。
7年前と比べて大人っぽくなった彼。
着ているスーツも御曹司らしい仕立ての良いもので、端整な彼の顔立ちに良く似合っている。
そして、昔と変わらないあの眼差し。
花澄の胸に、懐かしい想い出とともに甘い痛みが広がっていく。
────月杜雪也。25歳。
7年前に離れたきり一度も会っていなかった、花澄の『元婚約者』にして『初恋の人』。
花澄の家は徳島で藍染め業を営んでいた旧家に連なる家で、今は没落したが、数年前まではそれなりに裕福だった。
そして雪也の家は日本随一の繊維メーカー『東洋合繊』の起業者一族で、政財界では昔から多大な影響力を持っており、今でも月杜の名は世間に広く知れ渡っている。
その直系の家に生まれた雪也は、いわば『生粋の御曹司』だ。