恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
「あのっ、品川の研究所って、本社の隣にある研究所ですか? 5年ぐらい前にできた……」
「そ。花澄ちゃん、よく知ってるね?」
「前に『日経繊維新聞』に載ってたのをたまたま見たので……」
花澄は賢吾を見上げ、言った。
東洋合繊の品川本社の敷地内に先端素材の研究所ができたと知ったのは、5年前。
たまたま役員室で読んでいた経済新聞に載っていた。
賢吾は花澄を眺めつつ、首を傾げて言う。
「そういえば先日、雪也が君に会ったって言ってたけど?」
「あ、はい……」
「で? 君たちは今、どうなってるの?」
「……は?」
突然の質問に、花澄は思わず間抜けな声を上げてしまった。
どうなってる、とは……。
ぽかんとする花澄に、賢吾は事実を確認するかのような機械的な口調で続ける。
「まだお友達段階なのか、正式に付き合いを始めたのか、もう体の関係までいってるのか。はたまた既に婚約を交わしたのか」
「……なっ、何言ってるんですか、賢吾さんっ!?」