恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



賢吾は花澄から視線を逸らし、宙を見据えて呟くように言う。

どこか辛そうな、苦しそうなその横顔……。


「あいつがその道を選んだ理由は僕もなんとなくわかってる。……でも、そもそもの理由がどうあれ、今のあいつは昔のあいつとは違う」


賢吾はそこで一旦言葉を切り、花澄を見た。

……何かを試すような、その瞳。


「今のあいつには、今のあいつに合う人がいると僕は思うんだけど。……花澄ちゃん、君はどう思う?」


賢吾の言葉に、花澄は内心で息を飲んだ。

賢吾の言いたいことは花澄も十分理解している。

……どんなに切なくても、心が痛くても……

雪也の将来を考えたら、どうすべきかなど……明白だ。

花澄は頷き、真っ直ぐに賢吾を見た。


「ええ、私もそう思います。雪也さんはこれから、たくさんの人の将来を背負っていく身。ですから彼の力になり、支えになる人が雪也さんの傍に居てくれたらと思います」


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