恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
2.心の傷
──── そして、30分後。
東洋合繊のブースを離れるや否や、宮澤がガシッと花澄の腕を掴んだ。
「か、花澄ちゃん! どういうことか説明したまえっ」
「……え、えっと、その……」
花澄はぽりぽりと頭を掻き、うーんと首を捻った。
自分の過去は会社ではほとんど話したことがない。
それはこれまで、特に言う必要がなかったからなのだが……。
それにもう、雪也や賢吾と婚約していたのは過去の話だ。
花澄は宮澤に、当たり障りない範囲で自分たちのことについて軽く話した。
……5分後。
宮澤は驚きに満ちた目で花澄を見た。
「……まさか、婚約者だったとはね。しかも相手は月杜の本家……」
「昔の話ですよ。今は全然、そんな関係じゃありません」
「しかしまさか、君が……。いやはや、なんてことだ」