恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~



雪也の言葉に、花澄は頭を抱え込んだ。

雪也の気持ちは嬉しい。けれど……。


広瀬と別れ、今度の誕生日は一人寂しくケーキでも食べようかと思っていた。

だから雪也がお祝いをしてくれるというだけで、本当に嬉しい。

心が弱っている今の自分には、雪也の優しさは熱湯のように熱く思えてしまう。

深入りしてはならないとわかっていても、その優しさに惹かれてしまう……。


「……ありがと、雪くん。雪くんの気持ちは本当に嬉しいよ。でも食事だけでいいから。食事だけで、十分だから……」


花澄は喉の奥から絞り出すように言った。

花澄の気持ちが伝わったのか、しばしの沈黙の後、雪也が電話越しに軽いため息をつく。


『わかったよ。……じゃあ俺の方で店は予約しておくから。また詳しいことが決まったら連絡するよ』

「……うん、ありがとう、雪くん」

『来週、楽しみにしてる。……おやすみ、花澄』


< 85 / 334 >

この作品をシェア

pagetop