恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
優しいテノールの声と共に電話が切れる。
……ツー、ツーと無機質な機械音が耳元に流れる。
花澄は通話終了ボタンを押した後、パタンと携帯を閉じた。
胸に、ジワリと温かいものが広がっていく。
雪也には雪也に相応しい人がいる。
……賢吾もそう言っていた。
今はただ7年ぶりに会った懐かしさから、もう一度親交を深めたいとお互いに思っているだけだろう。
雪也ほどの人が、自らの置かれた立場や身分をわかっていないはずがない。
そう、わかっていても……。
それでも、嬉しいと思ってしまう……。
切ない痛みと共に胸に広がる、温かいときめき。
心の底に押し込めた初恋を揺り動かす、雪也の瞳、言葉……。
花澄は切ないため息をつき、携帯をそっと枕元に置いた。