恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
3.昔とは違う関係
翌週の土曜日。
18:00。
花澄は雪也に連れられ、代官山にある『Ristorante ASK』へと向かった。
『Ristorante ASK』はイタリア料理のレストランで、代官山の駅から裏通りへと少し歩いたところにある、閑静な住宅街の中の一軒家レストランだ。
エントランスをくぐり、色とりどりの花や南国風の木々が植えられた開放的なアプローチを抜けると、薄黄色の壁とテラコッタの煉瓦に囲まれたフロアが目の前に広がる。
フロアに並ぶ重厚なアンティークの椅子とテーブル、そして綺麗に整えられたテーブルクロスと銀のカトラリーが、上品な雰囲気を漂わせている。
花澄は雪也とともに案内された個室に入り、店員が引いてくれた椅子に静かに腰かけた。
「すごく綺麗なお店だね……」
花澄は少し緊張しながら辺りを見回した。
花澄は今日、手持ちの服の中では比較的上品に見えるピンクのカットソーとビロード地のスカート、アンゴラ混のボレロを身に着けて来た。
ドレスコードには引っかからないが、上質なダークグレーのスーツを着た雪也に比べると明らかに安い格好なので少し気遅れしてしまう。
せめて髪や化粧はしっかりせねばと、身支度にはいつもより時間をかけてきたのだが……。