恋獄 ~ 白き背徳の鎖 ~
2.みじめな気持ち
19:30。
花澄は無言で腕時計を見た。
直行はまだ来ない。
何かあったのかもしれないとメールを送ってみたが、返信もない。
「…………」
得体のしれない不安が胸に広がる。
しかしそれ以上に花澄の胸を占めているのは……。
花澄の斜め後ろにある、半個室の席。
雪也と彼女の会話が、途切れ途切れに耳に入ってくる。
……聞くつもりなど、ないのに……
直行が来ないこと以上に、雪也達の存在が花澄の心を痛めつける。
イブの夜、盛装し彼女と優雅にディナーを楽しんでいる雪也。
それに比べて、自分は……。