身勝手な衝動。
無意識のうちに大介にかけたほうの毛布に潜り込もうとしていて、その声でハッと我に返った。
あたしは智の彼女で、大介は智の親友、あたしたち3人はそれ以上でもそれ以下でもないのに…。
でも、そう言った大介の声があまりにも切なくて。
「…ごめん」
何に対しての“ごめん”なのか、あたしは大介の毛布に潜り、背中におでこを付け、腕を回した。
とたんに香る、大介の匂い。
今夜だけ、今だけでいいから、大介の体温に触れていたい…。
大介がもう一度言う。
「お前は誰の彼女だよ」
「…うん」
その夜、大介は一度もあたしのほうを向かなかった。
けれど、背中から回したあたしの手だけは、痛いくらいに握り続けてくれていた―…。