ただ、逢いたい
甘ったるい声は、聞きたくない。
否応なしに、思い出してしまうから。
ここにいるはずがないのに、由梨が勇人くんを呼んだあの情景を。
見せつけられた時のことを。
もう、何年も前のことなのに、目に焼き付いている。
今でも思い出してしまう、大嫌いな声。
「あたし、先に戻りますね」
結局青山さんは、違う部署の子に捕まった。
青山さんには笑顔を振りまいているくせに、あたしを見ては睨み付ける。
早くどっか行けと言うことらしい。
まだまだ若いな、と思った。
長くなりそうだし、甘ったるい人と一緒にいるのは嫌だったから、青山さんに一言声をかけてその場から去った。