ただ、逢いたい
会社を出たあたしは、相変わらず引っ張られたままに早歩きをしていた。
「ねぇ、ちょっと!
どうしたの?」
出てから藤井くんの表情が変わった。
後ろから見ているだけだから分かりにくいけど、少し不機嫌になっている。
あたしの言葉に耳も傾けずに、どんどん進んで行く。
「ちょっと!
腕、痛いんだけどっ」
「あ、ごめん」
ハッとした感じで、ようやく止まって腕も離された。
ただ、表情は引きつっていた。
「どうかしたの?」
表情を見る限りは、あまり穏やかではない。