ただ、逢いたい



顔色を伺いながら、理由を聞く。


でも、藤井くんは俯いたまま、何も答えない。

黙り込んでいる。


あたしも、どうしたらいいか分からない。




「ごめんな……」




そんな中、ぼそりと呟いた。


俯いたまま呟いた言葉だけど、あたしの耳にはしっかり届いていた。




「あ、謝らなくても大丈夫だよ。
うん、あたしは平気だから」




この時、何に対して平気だと言ったのか分からない。


そもそも、何に対して謝られているのか分からない。


だけど、理由なんて聞ける雰囲気ではない。


ちらっと見えた藤井くんの表情は、落ち込んでいるようだったから。




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