ただ、逢いたい
「……あの子に、電話がかかってきたの。
相手は、たぶん男。
あの子の甘ったるい声が増した感じだから。
それに、凄い幸せそうな表情だった」
「相手は、分からなかった?」
真面目な声で、彩菜は聞いてくる。
あたしは、それに首を振ってから答える。
「あたしの名前を出そうとしていた。
電話をしながらあたしの方をちらちら見て、タイミングを伺っていた。
だから……勇人くんだと思ったの」
あの時の彼女の様子を思い出しながら言ったら、泣きそうになってしまった。
言葉にしてしまえば、事実だと受け入れるしかなくなってしまう。