ただ、逢いたい



あたしは下を向きながら謝っていたため、相手の顔を見ていない。


声でかろうじて男性だと分かった。


なんだか、聞き覚えのあるような声でもある。



相手を確かめるために、顔を上げようとした。




「風華……?」




その言葉に、顔を上げようとしたあたしは止まった。


名前を呼ばれたあたしは、相手を見たり、目を合わせてはいけない気がした。



イヤ、気がするどころではない。


目を合わせてはいけない。


一刻も早く、逃げるべきなんだ。



そう思うのに、足は動いてくれない。




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