ただ、逢いたい



少し力強く言われた声に、ビクッと体が反応した。


その拍子に、とうとう顔を上げてしまった。


そして、相手と目が合う。


目の前にいたのは、間違いなく“彼”だった。




「勇人くん……」




呟くように、名前を呼んだ。



逢うのは、何年ぶりだろうか。


忘れるために、逢わずに連絡も絶ったのに、結局忘れられなかった。



だけど、今もあの子と続いているのだから、あたしの入る隙はない。


それでも、逢ってしまえば気付く想い。


今でも好きなんだ、と思い知らされる。




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