ただ、逢いたい
「風華っ!!」
大声で、勇人くんが呼ぶ。
その声は、もちろんあの子にも届いているはず。
なのに、あたしの名前を呼んだ。
だけど、振り向かなかった。
イヤ、振り向けなかったんだ。
目からは、大粒の涙が溢れていたから。
振り向いてしまえば、逃げられないのは分かっていた。
勇人くんは優しいから、理由はどうであれ、泣いている人をほっとけない。
その優しさに触れてしまえば、甘えてしまう。
それは、許される行為ではない。
何で、こんなにもタイミングが悪いのだろう。
以前のあの子との再会といい、今日の勇人くんとの再会といい。