ただ、逢いたい
「暗くないよ。
普通だよ」
『そう?』
最近、テンションが低いのが普通になっていた。
年齢も年齢で落ち着いてきたせいかもしれないけど、
逃げたあの時から自分の感情が上手く出せなくなっていた。
電話の主である親友の結城彩菜は、この気持ちも理由も全て知っている。
だから、よく心配される。
そのたびに大丈夫とは言うけど、嘘だと見抜かれる。
目のつけどころが違うらしい。
『まぁ、アイツこそが風華の運命の相手だからね』
さすが、今回も何を考えていたか、ばっちり見抜かれていた。
最近は、それしか考えなくなっていたんだけど。
嘘を吐けないと分かっているからこそ、何も言えない。