ただ、逢いたい
「これは、彩菜も知らないこと。
俺の父さんが、由梨の父親と知り合いだった。
驚くことに、母さんもその事実を知らなかった。
それを由梨は、利用したんだ」
以前、少しだけ考えていたこと。
親の権力を使ったんじゃないかって。
それは、真実だったのか。
「あるパーティーでゆ由梨は俺を見かけて、気に入ったらしい。
だけど、自分で努力する前に、父親に言ったんだ。
俺とつきあいたいから、なんとかしてくれって」
あたしは無意識に、椅子をぎゅっと掴んでいた。
そうでもしないと、逃げてしまいそうだった。