ただ、逢いたい



「ごめんね」




なんの脈絡もなく、いきなり謝られた。

その上、頭まで下げられた。

以前の彼女だったら考えられない光景だ。




「何に、謝っているの?」




分かっていることだけど、わざとそう聞いてみる。




「勇人くんを奪ったこと。
それと、聞いたと思うけど、利用していたこと」




思った以上に、素直に答えられた。

それにも少し、驚いた。




「あたし、そんなに由梨に嫌われていたの?」




ずっと、名前を呼ぶのを避けてきた。


だけどもう、以前の彼女でないことは明白だった。




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