ただ、逢いたい
それは、ある日の仕事終わりのこと。
定時になり、用事もあったから、その日に限って早く部署を出た。
エスカレーターで下まで降りると、会社の入口に見知った顔があった。
でも、こんな所で絶対逢うことのない顔。
街中でばったりとかなら分かるけど、何でここでと疑問が浮かぶ。
その見知った顔ては、勇人くんだった。
別れてから、初めて見た。
付き合っている時は、1度も会社に来ることはなかった。
なのに、何で今いるのだろうか。
淡い期待を抱きながら、声をかけようと小走りで近付く。
無視される可能性もあった。
けど、考えるより先に足が動いていた。