ただ、逢いたい



そんなあたしよりも先に、別の方向から甘ったるい声が聞こえた。




「勇人ー!
お待たせぇ」




その声に、足が止まった。


吐きそうなほど甘く、可愛い子ぶっているのがすぐ分かるほど。



でも、聞いたことのあるような声。


そう思ったら、声の方を向いてはいけない気がした。



だけど、足は止まっているのに、体は自分の意思に反して動いた。


そして、声のする方を見てしまった。



その瞬間、あたしは息が止まりそうだった。


それと同時に、見たことに後悔したんだ。



本当は今まで、どこか嘘だと思っていた。


実際見ていなかったから、現実味がなかったんだ。




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