ただ、逢いたい
あたしは、見た事実を受け入れることしか出来ない。
2人を見かけたからと言って、声なんてかけられない。
あたしは、知らないはずなんだから。
それに、どう声をかけていいかも分からない。
平気なふりなんて、おそらく出来ないから。
彩菜が何度か、
“勇人にどういうつもりか聞く”
と言ったけど、あたしがそれを止めていた。
何を言われても、素直に受け入れることは出来ない。
2人が知り合った経緯も知りたかったけど、それすらも聞けない。
結局何一つ、本人には聞けないんだ。
「ほら、言った通りだろう?」
急に、声が聞こえて驚いた。
いつの間に、背後に人が立っていたのだろう。