ただ、逢いたい
彩菜に言われて思い出した。
勇人くんには彩菜といういとこがいるように、
由梨にはてっちゃんという幼なじみがいる。
何でも知っている、身近な存在が。
『ちょっと分かりそうなヤツに当たってみるよ。
あと、勇人の親にも聞いてみる。
もちろん、勇人にはバレないようにね』
「うん……分かった」
そう呟いて、電話を切った。
本当は、真実を知るのが物凄く怖いんだ。
親の権力を使って勇人くんを手に入れたことが事実なら、あたしは何をするか分からない。
怒り狂ってしまうかもしれない。
逆に、何もする気が起きなくなるかもしれない。
実際、自分がどうなるか分からないから、余計に怖いんだ。