君がいるから―番外編―
窓外は温かな日差しが降り注いでいるというのに、大きな窓全てに掛けられた布地によって遮られている―――ある一室。
その一室に白灰の髪と蒼の瞳を持った者がここに1人―――。
はぁーっと一つ息を吐き出す。
そして、親指と人差し指で目頭を軽く力を加え押さえつける。
もう一つ息を吐き出して足元に何冊も重ねられた本の塔に、手にしていた一冊の厚い本を重ね置いた。
腰を下ろしていたソファーに今度は体を横たわらせ、柔らかなそれはどんどん俺の体を沈めゆく。
「…眠い」
呟き、瞼を閉じて目元を隠す為に腕を乗せた。
酷使し続けた目には、腕の重みが心地良く感じる。
今更ながら、昨夜から今まで本を読み続け、一睡もしてないことに気づく―――ここ数年はこれの繰り返しだ。
自分にとってはこれが―――日常に過ぎない。
陽が上る時間帯には、外へ出て陽の光を浴びることもせず、誰も寄せ付けないような閉めきった薄暗いこの部屋で本を読み続ける日々。
陽が落ち紅い月がより輝く闇が訪れれば、ただ一つの蝋燭を灯して紙に描かれた世界へと更に引き込まれていく―――。
そして現実へと戻った時には、睡魔に襲われ深い眠りへと落ちていく事が当たり前。
今もまた意識が次第に遠くなっていく最中―――。
コンコンッ コンコン
微かな物音に無意識に指が反応し、意識が夢に行く一歩手前で遮られた。
「………」
聞き耳を立ててみたがそれは気のせいのように思え、再び夢の世界へ意識を向ける。
ギーッ パタンッ
それなのに、再び耳に届く微かな物音に、腕を退かし瞼を微かに開く―――。
「……うるさい」
昔から耳はいい―――というか、物静かなこの部屋にいれば、嫌でも微かな物音は耳に届く。
気だるい上体を起こすと、ギッとソファーが音を立てる。
食事も数時間前に取った。
食事以外、この部屋に誰も来るはずもない―――何故なら、そう言い付けているからだ。
………。
ならあの物音は―――。
考えようにも、眠気が残る脳はうまく働かない。
考えるのはめんどくさいが、人の眠りを妨げられるのは不愉快だ。
物音がしたのは隣の部屋から。
勝手に主の許可なしに入った"侵入者"を確認せずにはいられず、気だるさの残る体を立たせたが―――。