君がいるから―番外編―


「それはまぁ、そうなんだろうけど。もしかしたら、また顔を合わせることもあるかもしれないし。それに、私は知りたい…と思ったから」

「………」

「…教えてくれないなら、ずっとここで待ってようかなぁ?」

 誰か、今すぐこの女の首根っこ掴んで、ここから放り出してほしい。
治まりかけた怒りを込めて長いため息を吐き出し、女へと視線を向け、苛立ちを含んだ声音で言い放つ。

「レヴァイス―――レヴァイス=ラスティー=シャルネイ」

「レヴァイス…ラスティー…シャルネイ」

 天井を仰ぎ、不思議そうな表情から考え悩む表情へと変える女。

 こいつは、いつまで俺の時間を邪魔し―――。

「シャルネイ!?」

 突如、大声を上げて俺を指差す行為に我慢出来ず、顔を顰めて女を睨みつけた。

「あっごめんなさい…。でも、あの、シャルネイって今言ったよね!?」

「っんだよ」

「もしかして…ジンの…兄弟とかだったりする?」

 ジン―――その名で一瞬だけ、身体が反応してしまう。

「えっと…レヴァイスく…さん?」

「レイ」

「はい?」

「レイでいい」

「レイ…さん」

「さん、いらない」

 何故だ―――自分でも何故だが分からない間に、ふいに口から飛び出していた言葉に、自身で内心驚く。
この女のペースにいつから巻き込まれたのか。
 そして、おもむろに腰を上げて呆然と立ち尽くしている女の元へと足を向けた。

 傍へ寄り腕を組んで見下ろす俺に、女は真っ直ぐ茶がかった瞳で見つめてくる。

「あんたのその服。珍しい格好してる」

「あーそれはその…。話せば長くなるんですけど…いい?」

「ならいい」

「いいの!?」

 いいも何も、この女の身の上話など興味が湧くわけがない。

「…あんたの言うとおり兄弟。ジンは俺の兄」

「やっぱり、そうなんだ! でも、顔はあまり似てないね。ジンは男っぽい顔立ちだもんね」

 "ジン"…ね。
 ふ~んあの人が珍しいな、こんな女に許すなんて。

 目を細め組んでいた腕を解き、閉じられている片方の扉へ手をついて、女へとより一層体を近づけた。

「聞くこと聞いたんならさっさと出てってくんない?」

 互いの顔が目と鼻の先にあり、囁くように言うと女は変な声を上げた。

「ぃっ!?」

 それと同時に女の頬が色づいていく―――。
 からがいのある女だな―――っと更に顔をより近づ唇を開いた。
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