mirror【超短編】
鏡の中の自分
片方の唇の端が上がった。
自分自身はそんなこと
した憶えは無いのに。
ニュッ
突然 鏡の中から手が出てきた。
ガシッと顔を掴む。
「…!?」
物凄い力で引っ張られる。
「やっ…助け…助けて美波っ…」
ズボッ
未夢は、鏡の中に招かれた。
「未夢…?」
何かを聞いた美波は、不審そうにトイレの中を窺った。
「未夢…?どこ行ったの?
隠れるなんて趣味悪いよ。
…やめてよ、もう!」
薄暗いトイレで美波は叫ぶ。
「…ごめんね。」
「未夢〜!
もう、おどかさないでよ!」
「ごめんごめん。
さ、帰ろっか。」
『美波!違うの!
それはあたしじゃない!!
未夢はあたしよ!!あたしはここに居るの!!ねぇ、美波…っ!!!』
鏡の中で、未夢は叫んだ。
しかし、その声は届かない。
彼女もまた、別の誰かを鏡の世界へと招き入れなければ、現実世界へは戻れないのだ。
そのときの姿は、招き入れた人物の姿なのだけれど…。
【END】