花火
暖かさ
咲いて

散って

消えて。


届かない想い。

伝わる事のない辛さ。



全てが夢であったのならば・・・






願いは夜の空へ消えて行った。








ドンッ...ドンッ...

夜の空で花咲く花火。

それを人とは離れた森の中で静かに見つめる少女。

ふいに止まる花火の音。

木に身を預けながら瞳を閉じた。



サクッ


「こんな所で何をしてる。」


凛とした声にそっと瞼を上げれば少し不機嫌そうにしている少年が居た。

「見ての通り、花火を楽しんでただけだけど?」

「寝てる風に見えたが?」

「目に見えるものが全部確かなものじゃない・・・」

「?」

不自然に言葉を詰まらした少女に少年は首を傾げる。



そう、
目に見えるものが全てではない。確かなものじゃない。
けど、目に見えないものは消えてなくなってしまう。


あの人の様に・・・。



少女は心に鉛でも入っているかの様な苦しさを感じ、

苦しそうに少し、表情が歪む。





「バカ。」


「・・・・・・・・は?」



突然の言葉に顔を勢いよく上げると頭に何かが乗った感覚。

少女は一瞬固まったが直ぐに覚醒する。

「ちょっ・・・触んないでっ」

「バーカ」

ポンポンと少年は頭を撫でる。

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「・・・・・・何なの?」

「・・いや、別に。花火を見ようと思っただけだ。」

「こんな所で・・?」

「お前もだろ。」

「・・・。」




止んでいた花火の音が再び鳴り始めた。

二人で木に寄り掛かりながら空を見上げる。




安心する暖かさ。

隣に人が居る。


それだけで落ち着いてしまう―――・・・




もう少し、このまま、

時が止まればいいのに・・・。
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