誘惑の夜
彼氏がいるのに飲み会で……
二次会に行くメンバーを見送り、一人飲み直そうと歩き出す。

肩にポンと置かれた手に振り返ると、さっきまで同席していた男性。逡巡していると「捧です」と名乗ってくれた。

「名字は覚えてたんですが、名前までは……」

営業職なのに、人の名前を覚えるのが苦手な私の秘策。相手を不機嫌にさせず、且つ、先方から名乗ってくれる。申し訳なさそうに眉尻を下げれば、彼は目を丸くした後、口元に小さな笑みを作った。
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