証言者【TABOO】
祈るような気持ちで、裁判の成り行きを見守る。
お願い、そんなに彼を責めないで……これはただの間違いだ。
丸い背中は、ぴくりとも動かず、ただ座っている石像みたい。
傍聴席に座っているのは私だけ。毎日サービス残業を押し付けていた同僚たちも、旦那の愚痴を散々聞かせていたパート社員たちも、薄情なものだ。
「よう、おまえ来てたんだな。最初からいるのか?」
私の真後ろの席に座った男。背後から耳元で囁く声。
顔を見なくても、相手が誰かわかる。