体育館の天井に挟まっているバレーボール
すとん、と心に馴染んだその考えを認めた途端に、疲れた、と思った。
先輩からの終わりの言葉に怯える日々はもう、疲れた。
いっそ、私から終わらせてやろう。
ミルクティーをひとくち飲めば、不思議と心が穏やかなことに気付いた。
あんなに怖かったのに。
恋愛なんて所詮勘違いだ、とどこかの有名な人が言っていた気がする。
そう、きっと今まで私勘違いしてたんだ。
「先輩、私、ミルクレープが食べたいです。奢ってください。」
「…………はぁ?」
「引っ越しのこと、私に言ってくれなかったことはそれでチャラにしてあげます。」
「なんつーかお前ってあれだよな、うん、まぁ、いいや。」
「なんなんですかその曖昧さ。」
「なんでもいいだろ。」
かた、と先輩が席をたつ。
買ってきてくれるようだ。
レジへ向かう先輩の姿が100mほど先になったとき、私は静かに席をたつ。
そのまま店を出て、大通りに出ればちょうどバスが来たところだった。
少し古めかしいバスに乗り込み、一番後ろの席に座る。
パカ、と携帯を開きメールを打つ。
『別れましょう。』
その一行を打ちながら、別れなんてあっけないものだと思った。
多分、先輩はそれほど私のことが好きではなかったのだろう。
今まで私の我儘に付き合ってくれて感謝したいくらいだ。