体育館の天井に挟まっているバレーボール
「じゃあなんの用ですか。あ、映画代も明日払います。」
「いや、そーゆーことじゃねぇよ。一昨日のあれ、なんなんだよ。」
一昨日、とは。
映画の後のカフェで勝手に帰ったことを言っているのだろうか。
確かに何も言わずに帰ったのはまずかったのかもしれない。
あの時の気持ちがいくら不安定だったとしてもあの別れ方は失礼だったな、と思った。
「すいません、しっかり話すべきでしたね。」
まだ腕を掴み続けている先輩の目をしっかりと見る。
少し垂れ目気味の先輩の目、けっこう気に入っていたのにな。
「別れましょう。」
私の言葉に先輩は分かりやすくしかめっ面をした。
「なんでそうなるんだよ。俺が引っ越すからか?」
「それもありますけど、先輩私のことそんなに好きじゃないですよね?私に付き合ってもらうのもなんか、微妙な気持ちだったので。」
先輩が今まで見たこともないくらい目を見開いた。
口を開けて、閉めて、それでも言葉は出なかったようだ。
「違いますか?」
「………だから、」
追い打ちをかけるように言えば先輩は苦虫を噛み潰したような顔をした。
うーだとかあーだとか言葉になってない声を出す。
先輩、日本語話してください。