体育館の天井に挟まっているバレーボール
「お前さ、ぜんっぜん俺のタイプじゃなかったんだよ。笑わないしけっこう嫉妬深いしつまんねーし。」
「先輩の股間蹴ってもいいですか?」
「おい待て早まるな。最後まで聞け。お前と付き合うことにしたのにはちゃんとした理由がある。」
ぎゅ、と先輩は抱きしめる力を強めた。
今まで非常に健全なお付き合いをしてきた私と先輩にとって、抱きしめることも抱きしめられることも初めての経験だった。
「まぁ、毎日自分のこと見つめてくる後輩がいるってことは、素直に嬉しかったしな。」
そうだ。
私が先輩を好きになって、そうなったら自然と目で追うようになっていたんだ。
何がきっかけで好きになったんだっけか。
「どーせすぐ終わっちまうんだろーな、って思ってたのに、意外と続いて。しかももっと意外なことに、嫌じゃなかったんだよな。」
お前の嫉妬深さとか、生真面目さとか。
夢じゃないかと思った。
回り回って、この先輩は偽物なんじゃないかとさえ思った。
でも、肩口に顔を埋めるといつもの先輩のふんわりとした匂いがした。