背中を撫でる指先【TABOO】
背中を撫でる指先
―――ドンッ!パラララ……。
夜空に幾多の光が走っては消える。
滝が流れる様に、花が咲くように。
「ね、ね!拓郎(たくろう)、こっち隙間ある!」
たくさんの人が上を見上げる中、私は彼氏の拓郎の袖を引っ張る。
「ちょ、香緒里(かおり)ってば待てって」
すでに人混みに酔った様でうんざりした顔の拓郎は、慌てて私の隣に立った。
「はぁ、遅れたけど間に合って良かったね!」
「俺はもう帰りたいけどな……」
そう言いながらも、拓郎の目は次々と打ち上がる花火に魅了されていく。
私達は手をつなぎ、一緒に空を見上げた。
「お、ここも良く見えるな」
後ろから聞き覚えのある声がして、私は目線を斜め後ろに落とす。
―――えっ?敦也(あつや)?
そこにいたのは、元カレの敦也だった。
敦也もすぐ私に気付き、驚きの表情を浮かべる。
私達はしばらく見つめあう形になったけれど、敦也の連れらしき友人の声でそれは途切れた。
突然の再会に驚きつつもまた空を見上げる。
私よりはるかに背が高い拓郎はその出来事に気付かない。
と、ザワザワと騒がしい声がして団体が押し寄せる気配がした。
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